単身赴任で後悔しやすいことは?家計・家族・仕事の負担と決める前の確認ポイント

暮らしの困りごと

転勤を言い渡されて単身赴任を考え始めると、「生活費はいくら増える?」「家族との関係は大丈夫?」「断ることはできない?」と、短期間でいくつもの問題を決めなければならなくなります。

結論からいうと、単身赴任は「デメリットしかない」と一律に決められるものではありません。

家族の転校・転職を避けられるなどの利点がある一方で、生活拠点が2つになる金銭負担、赴任者自身の生活負担、家に残る側の家事・育児負担、家族と直接会える時間の減少は事前に確認しておく必要があります。

実際、労働政策研究・研修機構(JILPT)の転勤に関する調査では、転勤について「家族に与える負担が大きい」と答えた人が70.6%、「できれば単身赴任はしたくない」が51.3%でした。

ただし、この調査結果から「単身赴任をすれば必ず家庭が悪化する」とまでは言えません。

大切なのは、漠然と「つらそう」と考えるのではなく、次の4つを具体化することです。

確認すること 具体的に見るポイント
お金 家賃・光熱費・食費・帰省費から会社補助を引いた自己負担
家族 育児・介護・家事・学校行事を誰が担うか
期間 赴任期間の見込み、帰任条件、見直し時期
会社制度 社宅・手当・帰省費・転勤配慮・勤務地制度

この記事では、単身赴任のデメリットを必要以上に煽らず、「何を確認すれば後悔を減らせるか」という視点から整理します。

  1. 単身赴任で負担になりやすいのは「二重生活・生活管理・家族の役割変化」
    1. 家計|「一人分増える」より生活拠点が2つになることが大きい
    2. 赴任する側|家事と体調管理を一人で担う
    3. 家に残る側|家事・育児・介護が片方へ偏ることがある
    4. 子どもへの影響は「必ず悪影響」と決めつけない
  2. 「家族崩壊・離婚率・何年が限界」は数字で決めず、変化のサインを見る
    1. 離れていることより「役割と情報が共有されなくなる」ことに注意する
    2. 「何年なら大丈夫」という共通の限界はない
    3. メンタル面がつらい場合は単身赴任の我慢比べにしない
  3. お金は「手当が出るか」ではなく税引後と自己負担まで確認する
    1. 単身赴任手当は原則として給与課税
    2. 帰省費も「会社が払えば全部非課税」とは限らない
    3. 自己負担した帰宅旅費が特定支出控除の対象になる場合もある
  4. 単身赴任を断りたい・難しい場合は「拒否できる」と決めつけず早めに相談する
    1. 育児・介護が難しくなる転勤には会社の配慮義務がある
    2. 「行けません」だけでなく会社が検討できる情報を出す
    3. 会社との話し合いで解決しない場合
  5. 単身赴任にするか迷ったら「メリット・デメリット」ではなく3案を比べる
    1. 単身赴任にも「家族の生活を変えない」というメリットがある
    2. 辞令を受ける前後に確認したいチェックリスト
    3. 単身赴任すると離婚率は上がりますか?
    4. 単身赴任は何年が限界ですか?
    5. 単身赴任手当が多ければ損しませんか?
    6. 育児中なら単身赴任を拒否できますか?

単身赴任で負担になりやすいのは「二重生活・生活管理・家族の役割変化」

単身赴任の負担は、赴任する本人だけに発生するわけではありません。

赴任する側・家に残る側・子どもを含む家族全体で、今まで分担していた生活が組み替わることが大きな変化です。

家計|「一人分増える」より生活拠点が2つになることが大きい

単身赴任になると、家族の自宅を維持したまま赴任先でも生活します。

代表的に増えやすいのは次の費用です。

  • 赴任先の家賃・寮費
  • 電気・ガス・水道
  • インターネット・通信費
  • 食費
  • 家具・家電・日用品
  • 自宅へ帰る交通費
  • 赴任先と自宅を往復する際の雑費

会社が社宅・借り上げ住宅・単身赴任手当・帰省費を負担してくれる場合もありますが、制度は会社ごとに大きく異なります。

そのため「単身赴任は毎月○万円かかる」という一般的な数字より、自社の制度を反映した自己負担額を出すことが重要です。

赴任する側|家事と体調管理を一人で担う

今まで家族で分担していた場合でも、赴任先では、

  • 食事
  • 洗濯
  • 掃除
  • 買い物
  • 病気になったときの対応

を基本的に自分で行うことになります。

「一人だから自由」というメリットになる人もいますが、仕事が忙しい場合は、食事・睡眠・家事を後回しにしやすくなることもあります。

最初から完璧な自炊を目指すより、社員食堂、冷凍食品、宅配、家事代行なども含め、仕事が忙しい週でも維持できる生活を考えておくほうが現実的です。

家に残る側|家事・育児・介護が片方へ偏ることがある

子どもがいる家庭では、赴任者がこれまで担当していた、

  • 送迎
  • 入浴・寝かしつけ
  • 学校行事
  • 病院への付き添い
  • 休日の子どもの世話

などを、家に残る側が引き受ける場面が増えます。

介護中の家族がいる場合も同じです。

したがって、「赴任する本人が一人暮らしできるか」だけで判断せず、今まで本人が家庭で担当していた仕事を誰が引き継ぐかまで書き出してみてください。

子どもへの影響は「必ず悪影響」と決めつけない

親と直接会える時間が減る、運動会や授業参観へ参加しにくくなる、といった変化は起こり得ます。

一方で、単身赴任を選ぶことで、

  • 転校しなくて済む
  • 受験環境を変えずに済む
  • 友人関係を維持できる
  • 配偶者の仕事を継続できる
  • 介護環境を変えずに済む

という利点もあります。

JILPTの転勤調査でも、単身赴任を選択する事情として「子どもの教育」「老親・病人の世話」「配偶者の就業」などが挙げられています。

労働政策研究・研修機構「企業の転勤の実態に関する調査」

そのため、「家族帯同なら正解」「単身赴任なら子どもに悪い」と単純化せず、家族ごとの事情で比較する必要があります。

「家族崩壊・離婚率・何年が限界」は数字で決めず、変化のサインを見る

単身赴任を検索すると、「離婚しやすい」「家族崩壊する」「○年以上は危険」といった情報を目にすることがあります。

しかし、単身赴任をした家庭の離婚率が全国的に何%になる、あるいは○年を超えたら家庭が崩壊する、と判断できる公的な基準は確認できません。

単身赴任と家庭問題の関係を考えるときは、数字よりも実際の生活変化を見るほうが役立ちます。

離れていることより「役割と情報が共有されなくなる」ことに注意する

距離がある家庭では、日常の細かな出来事が伝わりにくくなります。

たとえば赴任者側は、

「今週も仕事が大変だった」

と感じていても、家に残った側は、

「子どもが熱を出して仕事を休み、学校の連絡も家事も全部一人で対応した」

という週だったかもしれません。

反対に、自宅側には赴任者の孤独・残業・体調不良が見えにくくなります。

連絡回数を「毎日必ず30分」など固定するより、

  • 家計で困っていること
  • 子どもの予定
  • 体調
  • 帰省予定
  • 家事・育児で助けてほしいこと
  • 赴任期間への不安

を定期的に共有できているかを見るほうが重要です。

「何年なら大丈夫」という共通の限界はない

半年でも大きな負担になる家庭があれば、数年間でも生活を組み立てられる家庭があります。

違いを生むのは期間そのものだけではなく、

  • 自宅までの距離
  • 帰省頻度
  • 子どもの年齢
  • 育児・介護の有無
  • 会社の経済的支援
  • 赴任終了時期が見えているか
  • 夫婦双方の仕事

などです。

「3年までは大丈夫」のような根拠のない基準を作らず、半年や1年など家族で区切りを決め、現在の形を続けられるか見直すほうが実践的です。

メンタル面がつらい場合は単身赴任の我慢比べにしない

赴任者・家族のどちらであっても、

  • 眠れない状態が続く
  • 仕事へ行くことが強く苦痛になる
  • 食欲が大きく変化する
  • 何をしても楽しめない
  • 飲酒量が増え続ける
  • 強い不安や落ち込みが続く

などがある場合は、「単身赴任だから仕方ない」と放置せず、産業医、会社の相談窓口、医療機関などへ相談してください。

厚生労働省の「こころの耳」相談窓口では、働く本人だけでなく家族からも、電話・SNS・メールで仕事やメンタルヘルスに関する相談を受け付けています。

お金は「手当が出るか」ではなく税引後と自己負担まで確認する

単身赴任を決める前に、人事へ「手当はいくらですか?」と聞くだけでは十分ではありません。

確認したいのは、会社が何を負担し、自分が最終的にいくら払うのかです。

会社へ確認したい項目 確認ポイント
住居 社宅・借上げ・家賃上限・自己負担
引っ越し 本人分の運送費、初期費用、家具家電
単身赴任手当 月額、支給条件、終了条件
帰省費 月何回、実費か定額か、対象交通機関
水道光熱費 本人負担か寮費込みか
赴任期間 想定期間、延長・帰任の判断時期

単身赴任手当は原則として給与課税

「会社から月3万円の単身赴任手当が出るなら、そのまま3万円分負担が減る」と考えると実際の手取りとずれる場合があります。

国税庁は、毎月一定額として支給される単身赴任手当について、非課税所得ではなく給与所得として源泉徴収の対象になると説明しています。

国税庁「単身赴任手当等」

いわゆる別居手当・住宅手当の性格を持つ「着後滞在費」についても、国税庁は給与等として課税するとしています。

国税庁「単身赴任者等に支給するいわゆる着後滞在費」

帰省費も「会社が払えば全部非課税」とは限らない

単身赴任者が自宅へ帰るための旅費を、月または年単位で会社から支給される場合も、国税庁は原則として給与の性格を持つものとして扱っています。

一方、職務上必要な出張に付随して帰宅し、その旅行全体が主として職務遂行上必要と認められるなど一定の条件を満たす場合には、非課税として扱えるケースがあります。

国税庁「単身赴任者が会議等に併せて帰宅する場合に支給される旅費」

会社の帰省制度について、「非課税かどうか」を自己判断せず、人事・給与担当へ確認してください。

自己負担した帰宅旅費が特定支出控除の対象になる場合もある

給与所得者には「特定支出控除」という制度があります。

国税庁によると、一定の単身赴任者が勤務地・居所と自宅との間を移動するために負担した通常必要な帰宅旅費は、条件を満たせば特定支出に含まれます。

ただし、帰省費を払えばそのまま全額が所得控除になる制度ではありません。

特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1相当額を超える場合に、超過部分について確定申告で適用を受ける仕組みです。

また、給与の支払者による証明や支出を証明する書類なども必要です。

詳しくは国税庁「給与所得者の特定支出控除」を確認してください。

単身赴任を断りたい・難しい場合は「拒否できる」と決めつけず早めに相談する

育児や介護などの事情があり、単身赴任や転勤が難しい人もいます。

この場合、「家庭事情があれば転勤命令を必ず拒否できる」と説明するのは正確ではありません。

一方で、会社側にも家庭事情への配慮に関するルールがあります。

育児・介護が難しくなる転勤には会社の配慮義務がある

育児・介護休業法第26条では、勤務場所の変更によって子どもの養育や家族の介護を行うことが困難になる労働者について、事業主はその状況に配慮しなければならないと定めています。

e-Gov法令検索「育児・介護休業法」

厚生労働省は、配慮の例として、

  • 子の養育・家族介護の状況を把握する
  • 労働者本人の意向を考慮する
  • 就業場所を変更する場合に代替手段の有無を確認する

などを挙げています。

ただし、これは育児や介護を理由に申し出れば、どのような転勤でも自動的に拒否できるという制度ではありません。

実際に転勤命令に従う義務があるかは、労働契約、就業規則、勤務地限定の有無、会社側の必要性、本人の事情などによって変わるため、個別に確認する必要があります。

「行けません」だけでなく会社が検討できる情報を出す

単身赴任が難しいときは、まず家庭事情を具体化します。

事情 会社へ伝える例
育児 子どもの年齢、送迎、配偶者の勤務時間、代替者の有無
介護 要介護者との関係、現在担っている介護、他の支援者
健康 通院や治療上の制約
配偶者の仕事 帯同した場合の退職・休職の必要性

そのうえで、

  • 異動時期をずらせないか
  • 勤務地を変更できないか
  • 期間を限定できないか
  • リモート勤務を組み合わせられないか
  • 勤務地限定制度へ変更できないか
  • 一定期間後に帰任を検討できないか

など、代替案を相談します。

会社との話し合いで解決しない場合

転勤・配置転換について会社とトラブルになり、自分だけでは判断できない場合は、労働局の総合労働相談コーナーなど公的な相談窓口を利用できます。

厚生労働省の「こころの耳 相談窓口案内」からも、仕事に関する公的相談窓口が案内されています。

退職や転勤拒否など大きな判断をする前に、就業規則・雇用契約も含めて確認してください。

単身赴任にするか迷ったら「メリット・デメリット」ではなく3案を比べる

辞令が出ると、「単身赴任するか、しないか」の2択で考えがちです。

実際には、少なくとも次の3案を比べたほうが判断しやすくなります。

選択肢 確認したいこと
単身赴任 二重生活費、帰省頻度、家に残る側の負担
家族帯同 配偶者の仕事、転校、住居、介護への影響
会社へ条件変更を相談 勤務地、開始時期、期間、テレワーク、限定勤務

単身赴任にも「家族の生活を変えない」というメリットがある

単身赴任には、一人の時間が増えるといった個人的な利点だけでなく、

  • 子どもを転校させない
  • 配偶者が仕事を辞めずに済む
  • 持ち家で家族が生活を継続できる
  • 介護中の家族の環境を維持できる

という、家族側の生活を守るための選択という面もあります。

だからこそ、「デメリットしかない」と決めるのではなく、家族帯同したときに失うものと比較してください。

辞令を受ける前後に確認したいチェックリスト

  • 赴任期間の予定は決まっているか
  • 家賃の自己負担はいくらか
  • 単身赴任手当の税引後の実質額はいくらか
  • 帰省費は月何回まで会社負担か
  • 家具・家電・引っ越し費は会社負担か
  • 帰省には片道何時間かかるか
  • 家に残る側の家事・育児・介護負担を誰が補えるか
  • 学校行事や重要な家族予定へ帰れるか
  • 半年後・1年後に赴任継続を見直せるか
  • 勤務地変更やテレワークなど別案を相談できるか

単身赴任すると離婚率は上がりますか?

「単身赴任家庭の離婚率は○%」「通常家庭の○倍」と一律に判断できる信頼性の高い公的統計は確認できません。

距離によってコミュニケーションや家庭内の役割分担が難しくなる可能性はありますが、単身赴任だけを原因として離婚を予測することはできません。

単身赴任は何年が限界ですか?

全国共通の限界年数はありません。

距離・子どもの年齢・帰省頻度・介護・会社支援など条件が違うため、「○年で限界」と固定せず、半年や1年など家庭ごとに見直す時期を決める方法が現実的です。

単身赴任手当が多ければ損しませんか?

手当だけでは判断できません。

一般的な単身赴任手当は給与所得として課税されるため、手当額と実際の手取りは異なります。

家賃・帰省費・光熱費などを含めて、最終的な自己負担額を計算してください。

育児中なら単身赴任を拒否できますか?

育児・介護休業法では、就業場所の変更によって育児や介護が困難になる場合、会社に状況への配慮義務があります。

ただし、それだけで転勤を自動的に拒否できるという意味ではありません。

早めに会社へ事情を伝え、代替案を相談してください。

単身赴任で最も避けたいのは、「会社に言われたから仕方ない」と、期間・費用・帰省条件・家族の役割分担を確認しないまま始めることです。

会社の制度と家庭の実情を数字と予定表に落とし込み、「単身赴任」「家族帯同」「条件変更の相談」の3案を比較すれば、自分たちの家庭で何が最も負担が少ないか判断しやすくなります。

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